大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

長崎地方裁判所 昭和23年(行)28号 判決 1948年7月08日

原告

柴田壽太郞

被告

長崎縣農地委員会

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

請求の趣旨

別紙目録記載の農地につき縣農地委員会の爲したる農地買收の裁決は無効なることを確認す、訴訟費用は被告の負担とす。

事実

原告は、別紙目録記載の農地は、島原市農地委員会において昭和二十二年八月十一日買收決定をなし、これに対し同年八月十九日異議の申立をしたが却下せられ、同年九月十二日訴願をしたが、縣農地委員会においては昭和二十三年一月三十一日これを認めず買收の裁決があつた、しかし、右は自作農創設特別措置法第七條の期間経過後の裁決であるから、無効というべく、よつてこれが確認を求めるため本訴請求に及んだと陳述した。

被告訴訟代理人は、訴却下の判決を求め、答弁として、原告は本訴において行政廳の処分の無効確認を求めており、行政処分の取消又は変更を求めるものではないから自作農創設特別措置法第四十七條ノ二第一項に所謂行政事件範囲外であるから不適法である、仮りに行政処分の取消変更を求めるものとしても被告がなした原告主張の訴願の裁決書の謄本が原告に昭和二十三年二月十八日送達され、原告はこれにより行政処分のあつたことを知つたのであるから、その翌日から起算して法定の出訴期間経過後の提起にかかる本訴は不適法である、又仮りに本訴が適法であるとしても、被告の裁決が原告主張のように自作農創設特別措置法第七條、第五項の期間経過後になされたことは認めるが、訴願に対する裁決の期間の制限は訓示的規定であつて効力規定ではない、從つて已むなく期間経過後に裁決がなされても当該裁決が無効又は期間経過後を理由として取消されることはないと陳述した。

理由

原告が島原市農地委員会の農地買收計画に対する異議申立が却下せられたため、昭和二十二年九月十二日被告長崎縣農地委員会に対し訴願をしたが認められず、昭和二十三年一月三十一日買收の裁決があつたことは、当事者間に爭がない。よつて、被告のなした右裁決が自作農創設特別措置法第七條第五項の期間経過後の裁決であるため無効となるか否かについて按ずること、右法條に規定する期間は、所謂訓示的の規定と解するのが相当であるから、右期間経過後においてなされた裁決といえどもなお有効というべきである。從つて、原告の農地買收無効確認を求める本訴請求は失当として棄却を免れない。

よつて、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九條を適用して主文のとおり判決する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例